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今の国王は第五代だが、その先々代の第三代の国王の時代に、ブータンを踏査した植物学者がいた。1958年のこと。ブータンと国交が樹立されたのは1986年、この国の農業に貢献した西岡京治がブータンに入ったのは1964年、さらにさかのぼる1958年に、彼はブータンに入り、植物調査や人々の生活や風俗や文化を調査している。「照葉樹林文化論」を提唱した中尾佐助である。西岡は彼に師事した人である。 そのころは文字通り秘境だったブータンを単身で踏査し、その始終を綴った本が『秘境ブータン』で、初版は毎日新聞社から1959年に刊行された。それが少し前に岩波現代文庫で再刊された。これが実におもしろい。 中尾佐助四十二歳、まだ閉ざされた国であったヒマラヤの王国を踏査したいと願っていた彼が、当時京大の学生であった本多勝一から、京都にブータン国王妃が来ているという情報を受け取る。一国の王妃が日本に来ていることに政府もマスコミも知らなかった。 彼がすごいのは、すぐに滞在しているミヤコホテルに電話をかけ、電話口に王妃を呼び出して、会う約束を取り付けてしまうその行動力である。王妃一行に面会した中尾は、ブータンの植物を調査したい旨を伝え、レセプションを開き、王妃の京都での滞在を手助けするのだが、レセプションの費用は毎日新聞社と掛け合い、それを全部もってもらうというその交渉力。 このころの学者のフットワークの見事さ、またその粘り強いパワーとしたたかさと、学問にかける情熱が、みごとにこの一冊に凝縮されている。まだ読み終えていないが、胸おどらせながら読んでいるところ。
by loggia52
| 2011-11-17 20:28
| 書物
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