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そのうちの二つは、《鮎川信夫賞》と《高見順賞》の選評。 これは正直な感想だが、本になってしまってからは、あれこれと制作中につきあってきた『石目』とは、すっかり違うものになってしまった。つくったぼくの入る余地は少しもなく、よそよそしい顔をして本棚にならんでいる。つまりは、ぼく自身がテクストとしてかなり冷静に『石目』を読むことができるようになったということ。各選考委員の方々の読みが、よく納得されるところがあり、いささか反発を覚えるところもある。しかし、これほどの優れた読み手の方々に『石目』が読まれたこと、そのことに胸がいっぱいになる。 高見賞の選評のうち、荒川洋治氏(『石目』にかかわる部分だけ)と、堀江敏幸氏の選評の一部を引用させていただく。なお、堀江さんの文章には、「とりかい観音」「石目」「ハーテビーストの縫合線」「樟脳船」の内容が織り込まれていている。 《時里二郎『石目』は、日常にひそむ民俗的な世界を、丹念にとらえたもので、引き込まれた。話の始点から終点までの流れが同じであること、ことばの量が過剰であることが気になった。終章近く、「もう少しここにいさせてください。」に至るイメージの流れは、この詩集の圧巻で、散文詩体のよいところが、みな集まっているように思う。力のある書き手だとあらためて思った。》 荒川洋治 《そんなふうに曖昧な場所でもがいているくらいなら、べつの世界を覗いてみなさいという、午前八時半の電話の、ここではないどこかと混線しているようなか細い声に背中を押されて、恐る恐る未知の風景に接してみると、そこには強弱の差こそあれ、「とりかい」のきかない言葉がいくつもうかんでいた。いま括弧とともにお借りした時里二郎さんの『石目』ふうに記せば、香具師からただでもらった樟脳船を母親と返しに行こうとする少年になって、船の代わりに中身を吸い取られた卵の標本を抱えていたような感触なのである。「詩」と「死」を取り除くどころか、両者をぎっしり詰め込んだ石の、そこに鑿を当てれば美しく割れるはずの一点で棒立ちになっているこちらの足元に、三角みず紀さんの『隣人のいない部屋』を包む、列車なのになぜか船と同じ揺れが伝わって、そのなかで一歩も動かず窓外を流れるスクリーンプロセスを眺め、野木京子さんの『明るい日』の、タイトルとは裏腹な曇り空の匂いや卵の標本とは別種の空白を受けとめ、近藤洋太さんの『果無』の、物語ることに押し返された物語の重さ、たくさんの、実名のある死の重さにたじろぐことになった。 貰っておきながらひとりでは抱えきれない言葉の一部を返しに行くと、もう樟脳船は売り手の姿はなくなっている。(以下略)」 堀江敏幸 もう一つは、3月27日付、毎日新聞の夕刊で、城戸朱理氏が『石目』を取り上げて下さったことも。
by loggia52
| 2014-04-01 00:22
| 『石目』について
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