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料理店でこの本をいただいたので、まだ少ししか読んでいないが、思わず引き込まれて読んだのは「R421」という、至福の快感をもたらす目薬の話(この作品はとりわけ秀逸で、倉本さんの或る種のユートピアの原型かもしれない) その冒頭の部分だけでも十分にその魅惑を伝えることができる。 「河川の水面は源流から支流へその表情を変えてうねってゆく。それは異星人ダ・ヴィンチの描く水流の素描のように激しく泡立っている。やがて水面は少し凪ぎ、ゆったりと広がり本流として流れていく。其処の水たまりの川面に多くの小魚の死骸が浮いている。この街に住む者なら誰もが見るだろうこの光景はそれほど冥(くら)いものではない。水は澄んで透明、化学的にも汚れはなく辺りのさまは明媚である。 あなたは陽に反射してキラキラ輝くそれらを手に掬い、すべての魚体の眼球だけが無くなっているのに気付くだろう。そして驚く、眼の部分がぽかり空いている眼球を失った小魚たちの顔は清々とした至福の表情に近いことに。『まさか魚が微笑むわけなどない』とあなたは自分自身を疑い首を振り、まさかと思うだろう。 この都市を調査した学者たちは言う、これはR421という目薬のせいだと。 R421? 眼球に拡がる至福の快感、水草までもが輝くという大自然を透波するあの大いなる聖水のことだ。 」 (「微笑む魚」-『R421 についての覚書』」 こうして始まる作品は、綺譚の枠を嵌めているが、いつかしらその額縁が溶けていって、倉本さんの美術家としての原型的な世界にまで踏み込んでいくようなスリリングな体験を味わう。 表題作の「美しい動物園」もそうだが、言葉の出し入れが、まさにdrawing的。しかし、思いつきのようにして始まる奇天烈な話の書き手(話者)は、あくまでも醒めている。言い換えれば、しっかり譚の宇宙を統御している。 なお、この本には栞が挟まっていて、江戸雪、佐々木幹郎、品川徹、坪内稔典といった方々が書いていらっしゃるが、これがまた面白い読み物。 さて、ほかに話題に上ったことは、上梓が予定されている岩成さんの新しい詩集について。分厚い本になりそうだが、何よりも、そのスタイルの特異性にひそむポエジーの魅惑について、また、日本が西欧の思想を受け入れるときにおきた「言葉」をめぐる絶望的なズレについて、など興味深い話題が続いた。 一度、じっくり岩成さんから、カソリックの神学を含めての岩成詩学の講義をうかがいたいという話も出たが、これが実現するとうれしい。 さらには16世紀のネーデルランドの画家で、「最初の風景画家」と呼ばれるパティニールの話。みすず書房から出ている『青のパティニール 最初の風景画家』のことも話題に。
by loggia52
| 2015-04-19 12:42
| 書物
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