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とても興味深いお話だった。 ひとつは、小杉の音楽のきっかけは鉱石ラジオだったこと。それが始めでもあり、のちの小杉の音楽の源泉であり続けたということ。 中学2年生の時に鉱石ラジオを組み立てたときに、電源もないのにのに、空中に飛び交っている電波をキャッチして、イヤホンから音が耳に聞こえてくることが神秘的で、そのときにかすかに聞こえてくる音楽がとてつもなく美しく感じられたというのだ。 当時からクラシック音楽はよく聴いていたとのことだが、その後、真空管ラジオを作るようになる。組み立てが終わって、パーツがむき出しのままスイッチを入れると、いきなりベートーベンの「田園交響曲」が聞こえてきたという。その偶然に強く胸を打たれる。ちなみに、そうやって作った真空管ラジオを友達にプレゼントしたお返しに、古いヴァイオリンをもらうのだが、それがのちに小杉が実験音楽に使うことになるヴァイオリンだった。 鉱石ラジオや真空管ラジオから出るノイズの多い音が、彼には生のオーケストラの音よりもよほど魅力的だったらしく、日比谷公会堂でコンサートを聴きに行ったおりに、生のオーケストラの音楽に退屈して、演奏の途中にホールから出て、ドアを閉めるときにスーッと音楽が消えていく音が面白く、何度も演奏中にその音を聴くためにロビーに出たという。 空中に飛び交う電波をキャッチして聞こえてくるノイズにまみれた音が何よりもヴィヴィッドに、新鮮に聞こえてくるという音との出会いが、小杉の音楽の源にある。その偶然性とエレクトロニクスのたてる音。それは水野修孝らと始めた《グループ音楽》にも引き継がれ、楽譜をなぞる音楽ではなく、インプロヴィゼーションによる、楽譜に書いてない音楽。即興的で、偶然性にみちた音楽の方向へと突き進んでいく。その方向は必然的に、音楽というジャンルを越えた領域へと踏み込んでいくことになる。《グループ音楽》のメンバーの一人である刀根康尚が持ち込んだダダとシュールレアリズムの思想が、音楽という領域を越境して美術や舞踊(土方巽)の世界を呼び込んでいく。 もう一つ、対談で語られて小学生の頃の思い出。小学校が火事になり、音楽室に残っていた焼けたままのピアノの鍵盤を叩くと、得も言われぬ音がした、その音が忘れられないというエピソード。 どこまでもその偶然性と、音楽でいう音の世界を越境した音とが、小杉の音楽の源泉にあるということが印象に残った。 もう少し、小杉武久のことをこのブログで書いてみるつもり。
by loggia52
| 2018-01-21 00:09
| 音楽
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