カテゴリ
全体 Loggia/ロッジア 『石目』について ぼくの本 詩集未収録作品集 詩 歌・句 書物 森・虫 水辺 field/播磨 野鳥 日録 音楽 美術 石の遺物 奈良 琵琶湖・近江 京都 その他の旅の記録 湯川書房 プラハ 切抜帖 その他 カナリス 言葉の森へ そばに置いておきたい本 未分類 以前の記事
2023年 11月 2023年 10月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 more... フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
小さなスタジオのような空間の真ん中に椅子が一つある、それを取り囲むように、四方の上下にスピーカーが8つ。その椅子に腰をおろすと、照明がおとされ、闇の静寂が訪れる。やがて、聞こえるか聞こえないかの微かな音が静寂の中に聞こえてくる。冷蔵庫などの幾種類ものファンノイズを、高精細な録音機器で録ったものを再生しているらしい。聞き入っていると、いつのまにか、どれが本当の音で、どれが静寂の音なのか境目がなくなってくる。 おもしろい体験だったが、スタジオに入るまえ、この作品は15分間ですと制作者から告げられた。その時、ふと、詩などの言語作品を鑑賞してもらうのに、特別な空間を用意し、どれくらいの時間がかかるかというような断りはいれないと思いながら、待てよ?と気づいた。音楽や美術の作品の場合、むしろ、作品のための特別な空間(ホールや画廊や美術館など)や時間(演奏時間や開館・閉館時間の提示)はごく当たり前のことだ。そういう作品の受け手のための時間や空間について、言語作品の場合はあまり意識したりはしない。 しかし、文字を書き付けて作品にしている言語作品についても、その読み手に専用の空間を用意している。それが「書物」という容器であることは言うまでもない。 表紙から入って、書物を開ける。「遊び」、「扉」があり、その表題を眺めやって、時には絵まで添えられる。使用される紙質や色、本文のタイポグラフィーも、読み手の空間を画する重要な要素である。ノンブルも侮れない。「奥付」も忘れてはいけない、むろん、書物自体の重さ、手触りも、言語作品を「読む」行為に含まれる。書き付けられた言葉だけが、言語体験の要素なのではない。 音楽や美術作品が、作品を鳴らすホールや作品を掲げる空間に細心の注意を払うのに比べて、言語作品の作り手は、案外、作品の受け手に対する配慮には無頓着であるように思う。 ことばによる作品を読むという行為は、遮蔽された専用空間をつくるということを意味しているのかも知れない。紙片に刷られた言葉(文字)を読む読み手の時間が、「書物」という配慮された空間に滲んでいくとき、はじめて「読む」ことの悦びが約束される。
by loggia52
| 2008-03-02 14:55
| 詩
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||