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既に、神奈川県立近代美術館では、2006年に、柄澤氏のこれまでの営為をふりかえる大規模な回顧展が開かれているので、ご存じの方も多いに違いない。 柄澤氏の木口木版画の魅力は、何よりも版画を読む楽しみに誘われるところにある。例えば、彼の名を広く世に知らしめた1980年代の「肖像シリーズ」。モンテヴェルディ、ルドン、デューラー、ランボー、ボードレール、李賀、クラナッハ、グリューネヴァルト、ポー、カフカ、プルースト、バッハ、セーヘルス、メリヨン等々、名前を聞くだけで、ぞくぞくする。彼らは言わば柄澤齊の宇宙の創世に関わる重要な人物であることは言うまでもないが、このシリーズの特徴は、それぞれの人物の既存の写真や肖像画を下敷きにしながら、そこにその人物(芸術)に対する彼の批評が加わることである。それは、硝子が砕け散った破片とともに描かれるボードレール(言うまでもなく「パリの憂愁」の一編「不都合な硝子屋」を下敷きにしている)、飛び騒ぐ無数の鳥と海の波で描かれたランボー、鵞ペンと化したポー、「イーゼンハイム祭壇画」のキリストの足に打ち込まれた釘の頭として描かれるグリューネヴァルトなどという、意表をつく、けれんの冴えを見せる驚くべきヴィジョンとして表現される。どの肖像にも、こうした奇想や仕掛けや謎が仕組まれている。それが彼の対象に対する批評でありオマージュの方法なのである。 それぞれの肖像を手にとって、そこにどんな物語(ヴィジョン)が読み取れるか。いや、肖像シリーズに限らない。柄澤氏の作品は、いつもある深いヴィジョン(物語)を胚胎している。そのヴィジョンは往々にして迷宮や不条理や不穏なものを孕んで捻れているが、それらの属性は、言うまでもなく柄澤齊の世界観につながるものである。 個人的には、肖像シリーズ以前の、主に70年代の作品「ラビリンス」「エリュシオン」、「ヴァチカン」や「黄泉」「漂流物」、「船」「隕石」などの、宇宙の闇に浮かぶ細密な作品群に沈潜する「手」の孤独な憂愁を伝えるものを窃かに好む。今度の展覧会では、どんな作品が並んでいるか楽しみだ。 柄澤齊の作品をまだ見ていない人があれば、是非おでかけを。そうそう、ギャラリートークが10月5日(美浦康重氏と)2時からあるようです。彼は話も上手だから、いいひとときを過ごせること請け合いです。
by loggia52
| 2008-09-15 00:19
| 美術
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