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幼少年期には昆虫採集に明け暮れていた話をよく聞いていた。蝶や甲虫の標本を丹念に制作するように、彼の作品は構築的で硬質な構造物という印象が強い。しかし、本質的には失われた幼年期へのノスタルジアのようなものが核にある。もう少し言い換えると、失われた「観念としての幼年期」を核として、構築されたことばの構造物とでも言えようか。 (画像をクリックすると大きくなります。) 標本箱のある肖像 高柳誠に その標本箱は宇宙の隠語である。 それは少女の秘かな部分に装填され、非在の明るみに染められた 鏡の中の蒼空(そら)を冥想する容器。或いは花梨のたわむ庭で拾われた魂 の実、ことばの種子(たね)を口に含んで惑う鳥の脳髄をよぎる記憶の棺。 廃塔を吹きぬける意味の亡霊たちの眠る奥処。ぬぎすてられた仮面 の窩(あな)に匂う祝祭の後の憂愁。虚無の中で試みられたイマージュの交 合によって産みだされた名づけえぬものたちの王宮……… それらのことばが霏微(ひび)輝く転身の薄衣にくるまれた卵の夢々の中 で弊(つい)えるとき、黄泉(よみ)は、尽ぎることのない螺旋に自らを閉じこめて いる巻き貝のように、その標本箱の中に幽閉されている。
by loggia52
| 2009-05-02 12:31
| 書物
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