カテゴリ
全体 Loggia/ロッジア 『石目』について ぼくの本 詩集未収録作品集 詩 歌・句 書物 森・虫 水辺 field/播磨 野鳥 日録 音楽 美術 石の遺物 奈良 琵琶湖・近江 京都 その他の旅の記録 湯川書房 プラハ 切抜帖 その他 カナリス 言葉の森へ そばに置いておきたい本 未分類 以前の記事
2023年 11月 2023年 10月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 more... フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ぬば玉の夜の更け行けば楸ひさぎ)生(を)ふる清き川原に千鳥しば鳴く (万葉集巻第六) 「今日存している彼の歌では、これが第一の傑作だ」折口信夫は「口訳萬葉集」に書き添えている。この歌の前に「み吉野の象山際の梢には多(ここだ)も騒ぐ鳥の声かも」がある。ともに吉野離宮での作。長歌に添えられた反歌だから、吉野へのほめうたには違いないが、そういう儀礼的な歌でありながら、しきりに鳴く鳥の声に聞き入っている歌人の私的な情感をより強く感じる。 「ぬば玉」は、ヒオウギの実。この実のつやつやとした深い黒は、その音とともに枕詞としてはよくできた比喩。こういうことばに出会うと、夜の漆黒の闇が、ぬば玉の実の中に包まれているような感じすら覚える。 それで思い出したが、桂米朝の落語のまくらに、茄子の大きさを競い合う二人が、どんどんエスカレートしていって、究極には、「まっくらな闇にヘタをつけた茄子」が登場する。茄子の色に闇を連想することができた昔の話。 楸ひさぎ)は、アカメガシワという説やキササゲという説があって、よくわからない。染料の材料になったらしいが、花を想定しなくてもあおあおとした葉の茂る植物だろう。もちろん、夜だからその木々は見えない。しきりに鳴く千鳥の声ばかりが聞こえる川原。声に出して詠むと気持ちのいい歌である。
by loggia52
| 2009-09-01 22:00
| 歌・句
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||