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『X(イクス)-述懐スル私』から歌を拾って写すのはむずかしいとは言ったが、なかなか気に掛かる歌が随所にあって、次にそのいくつかを。
まだなにか咲くべきものやあると訊(き)くおのれのうちの苑に向かひて まだ距離がある筈なのに強烈な詩を蹴り込んでくる脚がある かつて読み一度捨てたる書(ふみ)さへや雪踏みゆきて買ひ戻したり 古き靴小さき段差につまづいてとつとつとつと鳥逐ふ両手(もろて) 丹田を海と呼びたる蘇軾かな今朝寂かなる波と思はむ しら樺の林を写生せむとして字をたしかめる扁と旁(つくり)を なかんずく黒酢のやうな字が好きだ「見捨てられた」つて感情が来る まだまだこれだけではすまないが、歌集をたっぷりと読む楽しみがある。『注解する者』の題材になっているものが、そのままこちらの歌集にクロスしているところもあり、読みどころもさまざま。 こうして書きうつしていると、この歌集は、まさに「ことば」と「詩」に対する、しずかにして深い関心と、それらを作品化することへの熱に動かされている歌人の生活の、つまりは日常と精神との吃水線を読むおもろさに気づかされる。引用歌、三首目の「古き靴」などは、そういう喫水線から不意にあらわれた傑作である。最後の「なかんずく」の歌も、その一首前は「しら樺の・・」でその前が次の歌。 さわがしい言葉のなかに立つてゐるここからは詩は沖の遠さだ 「ことば」や「詩」についての感慨が、日常の生活との境界を侵していく。その越境そのものを実況中継するかのような作品が、多く見られる。こう書いていると、おのずと茂吉の歌が浮かんでくるのだが、このことはまた別の機会に。
by loggia52
| 2010-10-26 20:47
| 歌・句
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