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《Peninsula》 ―あるいは、少し長めの後書 詩にとって《半島》とは何か。半島は、海と陸とをきわめて敏感に峻別しつつ、どちらとも融通を絶たない。ぼくたちはともすると、詩は《島》だと勘違いしやすい。《陸》=散文から海を隔てて浮かぶ固有種の楽園としての《島》。行分けのスタイルに象徴される《島》の植物や動物は、そうした島の条件を前提としている。時折、連絡船が往来し、陸(大概は「本土」と呼ばれる)から島の豊かな自然に育てられた植物や、そこにしか棲息しない固有種を愛づるために島にやってくる。 しかし、そうした珍種として珍重される固有種を島のブランドとして本土から注目を得続けるためには、《本土》―《島》という前提を絶えず受け入れなければならない。この関係は、言い換えれば《中央》と《辺境》ということになる。《辺境》というのは、実は未知な可能性と創造的なエネルギーの眠る場所であり、むしろ《中央》を巻き込み、《中央》対《辺境》という構図すらも溶解してしまうトポスとさえ言える。そう考える時、果たして《島》はその定義に十分答えられる場所だろうか。《島》を単体としてとらえている限りは、《辺境》のエネルギーは生まれない。むしろ、《陸》が散文なら、詩は《海》であるととらえるのが自然の摂理に適っている。《島》を《陸》と対置させるのではなく、《島》や海岸線をふくむ《海》を、詩のエネルギーの根源と考えた方がより創造的な構図が描けるのではないか。『海洋性』という城戸朱理氏の美しい詩論(「現代詩手帖1992.12)があることをここで思い出してもよい。 さらに、もう一つ前提として言っておかねばならないのは、《ことば》は《陸》のものである(もちろん《島》も小さな陸である)。人間が基本的に《陸》に棲息するからには、それは当然のことと受け入れざるを得ない。 一方、詩は《海》であると言った。《海》はことばを拒む。詩は、従って、本質的にことばとは相容れない。言い換えれば、それゆえに、詩のことばは、ことばには盛ることのできない《海》につながっている。ぼくたちが、《ポエジー》と呼ぶものがそこに生じる所以である。詩の出自は、ことばとは縁のない《海》のエネルギーにあるにも関わらす、《大陸》由来のことばを使わざるを得ないのだ。繰り返すが、そのエネルギーを封じられた詩のことばに発生する齟齬やねじれや沈黙や饒舌が《ポエジー》を生む。 このように考えるとき、詩は、《島》=行分けスタイルに固着する必要はない。言い換えれば、《陸》とのつながりを拒否すべきではない。《半島》が持つ詩の創造性を持ち出す所以がそこにある。 初めに書いたように、半島は海にむけて突出し、強く海に魅かれるように流れ出した陸である。それとは逆に、半島は海に浸食されることを拒んだ強い意志の形象として海に向けて突出している。海を拒否し、海に魅かれる陸のことばに、ぼくは詩のすがたを見たいを思っている。 今まで、書きそびれていたが、ここでは詩や小説やエッセイというジャンルは意味をなさない。詩と散文という構図ですら、ここでは取り払いたいと考えている。それでもなお、突き詰めて問われるなら、《半島》は陸から突出しているのだから、陸のことばで書かれたもの、すなわち《散文》ということにはなろう。《詩》は《散文》のしっぽでありながら、《散文》を飲み込むように仕組まれたウロボロスなのだ。《散文》を飲み込むとは、《散文》を殺すことであり、《散文》の可能性を開くことでもある。しかし、繰り返すが、そう答えたところで、ほとんどそれには意味はないだろう。 蓋し、半島は、半分、島であり、また陸の成り余れる部分とも言える。そうした両義性こそ、ことばのPeninsulaの辺境性が、世界像を映す無数の鏡面の破片をきらめかせる光のことばを生むはずのものであるとぼくは信じている。 今回《ロッジア》で開始した《半島へ》という作品の試みは、既に『歴程』579号で発表した『《半島へ》のためのfragmentとnote』と同様に、まだ作品としての体をなさないエスキスにとどまる。いわば半島調査の《field notes》である。《ロッジア》はしばらく、そういう性格の冊子になるようだ。 《ロッジア》12号より転載
by loggia52
| 2013-01-08 21:18
| Loggia/ロッジア
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