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高橋悠治、波多野睦美、栃尾克樹による《風ぐるま》の公演《夢のもつれ》が終わった。17日は東京・代々木上原の《ムジカーザ》、18日は大阪・梅田新道の《ザ・フェニックスホール》。 今ぼくの書き継いでいる『名井島』の詩篇から6つの作品。 名井島というのは、瀬戸内海に浮かぶ小さな島。そこは昔、言葉に特化したアンドロイドを手作りでつくる工房があったが、今は不具合を起こして本土から戻ってきたアンドロイドのサナトリウムのような島。アンドロイドの言葉のリハビリを行う《伯母》(これもヒトではない)と、それを手助けする島の猫とがしずかに暮らす島。 また、名井島は中世の物語のなかにでてくるのだが、流し雛の流れ寄る島でもある。《伯母》と島猫は、流れ着いた人形を、コトカタという古い蜜蜂の巣箱(かつては、アンドロイドの人工知能を寝かせておく保育器だった)に入れて、用済みの人形たちの世話もしている。コトカタを猫が揺すると、少しずつ中の人形が言葉を話すようになり、やがて「雛歌」を歌うようにまでなっていく・・・。 さて、歌われた作品は、言葉のリハビリ中のアンドロイドが書いたものと、コトカタの人形が紡いだ《ひなうた》(これは、アンドロイドの言葉の恢復訓練用に供されるものでもある)との2種類がまざっている。 ・・・・と、こんな話を、実はコンサート前のプレト―クとして、ぼくは舞台で、高橋悠治さんと話をした。 もちろん、こんな作品のなりたちとは関わりなく、悠治さんは作曲なさったわけだから、ぼくのハナシは、なくてもいいのだが、すこし、歌に物語の背景を添えることで、聴き手が音楽を受け取るときの見えないうつわのような役割を果たすことができればと考えた。 さて、後半のプログラム《納戸の夢 あるいは 夢のもつれ》は、2010年に、波多野さんの依頼を受けて書いた《反オペラ》。 《納戸の夢》のほうは、台本はもちろん聴き手は持っていないので、タイトルのとおり、少しもつれた物語なので、前半の名井島の歌が終わったあとに、舞台にあがって再びこの反オペラの物語のハナシをした。 男と、男の夢に棲む妖精と、男が幼い時になくなった母と、この三人を波多野さんが演じる。妖精が姿を変えた猫と男のやりとりは、主に悠治さんのピアノがかかわり、母(彼女の描いた日記を読む)の場面では、栃尾さんのバリトンサックスが音を紡ぐ。 言葉が音楽に変わる、その境界で揺れ動くさま、《かたり》が《うた》へと変容していく、しかし《うた》にはなりきらない、その境を行き来する音楽。ピアノとサックスが言葉の空隙を彩り、魂の《息》を吹き込むようにして進んでいく。 6年前は、自分の台本を冷静に聞くことはできなかったが、今回は、ほんとうに素直にこの音楽に聴き入ることができた。聴いていて、ぼく自身、ちょっと興奮した。もちろん、台本の構造の不十分なところもよくわかったが、それ以上に、波多野さんの表現力の深さと美しさに胸をうたれた。 とても充実したいい公演だった。
by loggia52
| 2016-11-20 11:40
| 音楽
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