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![]() 1960年代、小杉武久と高橋悠治、それに一柳慧らの接点を示す印象的な一枚の写真。1961年、草月会館ホールでの一柳慧の《IBM》の演奏風景。1961年8月に一柳慧がアメリカから帰国し、草月会館ホールでコンサートを開催したときのもの。 一番左、ピアノを弾いているのは武満徹、その右は塩見千枝子、その右前の背中を向けているのは黛敏郎、その右、壁側に立って脚をぐるぐるまきにしてうつむいているのが小杉武久、さらにその右は刀根康尚、折り目にかかってわかりにくいが次に水野修孝、脚立の後ろが一柳慧、そして右端の壁にもたれるように仰向けになっているのが高橋悠治。(ちなみに小杉、高橋23歳、武満31歳、一柳28歳) この一柳慧の作品は、図録によれば「8名の演奏者が同時多発的にさまざまな行為を行う『IBM 出来事(ハプニング)とミュージックコンクレート』という作品」。これは以前に読んだ立花隆の『武満徹・音楽創造への旅』でも言及されていて、それによると、テレビが普及していなかった当時、「朝日ニュースと大毎ニュースの二つの映画会社が紹介し、ニッポン放送が、録音構成で『偶然音楽』という番組を作って放送するほどだった。」と言う。 1952年からアメリカにいた一柳慧が1961年に帰国して、ジョン・ケージの音楽を紹介する。そして翌1962年にケージの来日。この一柳慧が火をつけたジョン・ケージの音楽の紹介によって、日本の現代音楽は一変する。吉田秀和はそのケージを日本に紹介する企画を一柳慧に依頼した、いわば仕掛け人だが、彼は60年代を《ジョン・ケージ・ショック》の時代だったと振り返っている。いわば、それまではシェーベルクの12音音楽が日本の作曲界を席巻していたのだが、その行き詰まりを誰もが強く感じていた。一柳慧もその一人だったわけだが、ケージの音楽によって、その息苦しい作曲観や音楽思想から解放された感がある。ケージの考える音楽とはどういうものか。立花隆が武満の評伝のなかで語っていることを引用してみる。 「こうして彼(ケージ)は、作曲というものを作曲者個人の主体性から解き放ち偶然の手に委ねることになった。(略)西欧音楽の伝統においては、音楽とは、人工的な音を人工的に組織してある構造を与えたものである。しかしケージの考える、あるべき音楽は、その対極にあった。彼によれば音をできるだけ本来の姿にもどしてやり、それを聴くことこそが音楽なのだという。」いわゆる偶然性の音楽とか不確定性の音楽とか言われるものだが、このケージの思想は、小杉の考えていた音楽と強く響き合っている。 おさえておきたいのは、小杉や水野らの《グループ音楽》の活動は、一柳慧がケージの音楽を日本に紹介する直前にすでに始まっていたこと。小杉が鉱石ラジオの体験から見出した偶然性や即興性と自然のままの音の世界への着目は、一柳やケージ由来のものではなかったことだ。ちょうど《グループ音楽》の即興音楽のコンサートと、一柳によるケージの音楽のコンサートはほぼ同時期に行われたのだ。もちろん、一柳やケージも小杉らのコンサートを聴き、小杉も一柳やケージの音楽を聴いている。そこから小杉はジョン・ケージの音楽に影響を受けることになるのだが、小杉の音楽の素地はケージのそれと共鳴しあうところが十分にあった。 それにしても、60年代は詩においても詩の言葉の実験性がより過激に熱を帯びた時代だったことを思い出す。吉増剛造、岡田隆彦、鈴木志郎康、天沢退二郎らの詩の前衛性。こうした詩人たちと、音楽家との接点はなかったのだろうか。 武満と谷川俊太郎はすでに交流があったので、谷川は一柳や小杉の音楽は聴いている。飯島耕一も 、武満、一柳、小杉の三人で結成された《コレクティブ・ミュージック》の第一回の演奏会の会場にいた。しかし、音楽と美術との結びつきほど濃密な交流はなかったように思う。 60年代の音楽は、とりわけ時間芸術の限界を乗り越えるために、より音の空間性を激しく求めて、美術の世界と強く結びついたようだ。そして、小杉武久はそのあともずっと、音の空間性と偶然性や不確実性をさらに進めていく。武満や一柳が、ケージに強く影響を受けながらも、やがてケージの音楽から離れていくのとは対照的だ。
by loggia52
| 2018-01-21 22:08
| 音楽
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