カテゴリ
全体 Loggia/ロッジア 『石目』について ぼくの本 詩集未収録作品集 詩 歌・句 書物 森・虫 水辺 field/播磨 野鳥 日録 音楽 美術 石の遺物 奈良 琵琶湖・近江 京都 その他の旅の記録 湯川書房 プラハ 切抜帖 その他 カナリス 言葉の森へ そばに置いておきたい本 未分類 以前の記事
2023年 11月 2023年 10月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 more... フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
定家の「明月記」は、やはり定家の書字の佶屈とした独特の文字の魅力にまず食い入ってしまう。当時の書字の典型とか理想とかいうものがあったのだろうが、どうみてもそれとはまったく異質な書風。「書は人なり」ということか。それについては専門家の見解を。古賀弘幸氏は、こんなことを指摘なさっている。なるほどと納得させられる。 「平安のかな古筆の流麗な書とはまったく異なる書風です。定家はなぜこのような書を書いたのでしょう。/鎌倉時代初期、いわゆる『新古今』の時代、定家は当時の歌壇の第一人者でした。勅撰集の撰者でもあり、定家に歌を選ばれることは名誉なことでした。定家に歌を選ばれるということは、定家に歌を書き写されるということです。定家が書き写した日記や物語の写本も権威を持っていたのです。その定家自身の自負があらわれているのがこの書風(定家筆「更級日記」写本について)ではないかと思います。彼の書はのちに茶人に愛好され、流行します。」(古賀弘幸『書のひみつ』) 古賀さんが言及なさっているのは「明月記」じゃなくて、「更級日記」の写本について。こちらは仮名書きなので、日記の書風とはまた違うことを付け加えておきます。 ところで、もう一つぼくが釘付けになったのは、当時紙が貴重だったから、明月記は、定家宛てに送られてきた書簡をストックしておいて、紙巾を揃えてつなぎ合わせて、その裏側に書いている。さらに後世にはそれを補強するために裏打ちの紙が重ねられている。つまり、定家の書いた明月記の紙面の裏側が見えなくなっているというわけだ。いわゆる紙背文書だったこと。修復の過程で、その定家宛ての書簡も吟味されたとかで、その歴史資料的な価値も増して、明月記が重文から国宝に格上げされたとか。 さらに、今回展示されていたのが、超新星爆発の記録の部分で、定家がそれについて漏刻博士に尋ねたその、博士の返信が明月記にそのまま継ぎ足されて記録されていること。漏刻博士の直筆の返信が、明月記の巻物のなかにそのまま継ぎ足されているのだ。これにはびっくりした。もちろん、コペルニクスも、ガリレオも生まれるはるか昔の、客星(超新星)の記録だから、天文学からも貴重な記録として扱われているらしい。(上の写真で、真ん中右側の比較的大きな書字が漏刻博士からの返書。それが明月記のなかに継いである) しかし、ここにはとても書けないが、この明月記の修復の気の遠くなるような複雑な工程と試行錯誤には恐れ入る。そのようなところにおそらくこの国の文化の底力というものが試されているように思われる。
by loggia52
| 2019-10-09 16:03
| 美術
|
Comments(7)
再び拙著に言及ありがとうございます。定家の紙背文書については「文字と書の消息」でも触れました(p.269)。ところで、「【明】月記」ですね。
0
Commented
by
loggia52 at 2019-10-18 14:06
古賀弘幸さま。間違いをご指摘いただき、恐縮です。「文字と書の消息」とても面白く、作品を書くのにずいぶんと参考になってくれそうです。ありがとうございました。
私がツイッターにリンクを張ったら、友人が指摘してくれたのです。私も最初気がつかなったのでした……。まだ少し残っているようです。
「消息」へのお言葉もありがとうございました。
Commented
by
loggia52 at 2019-10-18 21:51
お恥ずかしかぎり。ご指摘痛み入ります。
Commented
at 2022-03-29 08:10
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
菅野八郎、高貝弘也
at 2022-03-29 08:10
x
慶越雄二、松井ありさ
高貝弘也
|
ファン申請 |
||