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さらに瀬尾のイメージは満州の西側、西欧から言えば、ウラル、ヒンズークシ山脈の東にひろがる大陸の深奥部、そして南はヒマラヤ・チベット、北は北極海とに囲まれた地域へと版図を広げて、これら四方に囲まれた大陸の深奥部分を、19世紀の地政学の用語では「ハートランド」と呼ぶそうだが、この「ハートランド」のトポロジカルな意味の重要性を指摘するに及んで、ダイナミックな展開をみせる。
この地域は言うまでもなく、遊牧民、狩猟民族の住む閉じられた空間だが、西欧の歴史に明らかなように、ここに住むフン族アッティラが西欧に侵入することによって、フランスやイタリアなどの国の基本的な色分けがなされた。それ以後も、このハートランドからは絶えず西欧への侵攻が繰り返される。ハートランドのパワーは東の中国にも及ぶことは言うまでもない。チンギス・ハーンが典型的な例だが、漢民族はつねに、ハートランドに恐怖していた。 この恐怖の根源は、大陸深奥部の遊牧民たちの空間観念が、西欧のそれとは全く相容れないところからきている。それを「平滑的な空間構造」と呼んでいるが、言い換えれば「領土」という観念がないのだ。したがって、国境なり境界なりが意味を持たなくなる。そういう空間認識の相違が、「われわれの想像力ではまったく到達できないような思考・論理・言葉」を生んでいるという訳である。 そして、この講演は荒川洋治の初期詩集、「娼婦論」、「水駅」にでてくる印象的な地名のことごとくが、「このハートランドという空間のいくつかの結節点と、その外縁とをなぞって配置されている」という興味深い指摘を紹介して終わる。 満州に象徴されるハートランドという空間は、「戦後日本の思考空間・詩的空間からはとつぜん消滅してしまった場所、見えなくなった場所」である。荒川がその場所を繰り返し詩の中で扱うことによって戦後詩の世界に登場してきた象徴的な意味を問いかけている。
by loggia52
| 2009-03-22 10:35
| 詩
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