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![]() 2022年7月~2023年6月末日までに刊行された奥付のある詩集。応募方法は上の募集要項をごらんになってください。 昨年度は小林坩堝さんの『小松川叙景』でした。
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by loggia52
| 2023-05-08 10:43
| 詩
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![]() 種村季弘『ヴォルプスヴェーデふたたび』(筑摩書房1980)。こんなに面白い美術批評(こういう言い方も気恥ずかしいが)を本棚に眠らせておいたのは、本を買った当時は、いよいよ意を決して詩に向き合おうとしていたころで、急激に読書量が衰えた頃だったから。 北ドイツ、ブレーメンの北東に位置する町、ヴォルプスヴェーゼ。19世紀末に生まれた芸術家のコロニーをめぐって、ハインリッヒ・フォーゲラーやリルケ、それにパウラ・モーターゾーン=ベッカーを軸に語られる美術批評だが、種村さんが、そこに滞在した滞在記と重ねられているところがこの書物の妙。こんな美術批評のスタイルは、もはや望むべくもない。とにかく冒頭の入り方に魅了された。 「私はその何の奇もない麦畑の眺望が好きだった。ところどころに向日葵の群生した麦畑の真ん中に、置き忘れられたように、赤屋根に白亜の壁の家が一軒建っている。そこまで来ると私は少年時代の武蔵野の記憶に引き戻される。赤屋根の家が、私の子供の頃にはまだみかけた大正名残の文化住宅の面影を偲ばせるからだ。すると今見ている風景の全体が、いつか見たものの透明な内密感のうちに親しげに閉ざされてゆく。低地ドイツの小さな田園の一隅は、いつしか時間の彼方の武蔵野の追憶のなかに嵌め込まれている。ここでなら、麦藁帽子を被った少年が向日葵の群生の間からひょっこりと姿を現わしても不思議はなさそうだ。」9p. 冒頭に、種村の過ごした武蔵野の風景や時間が語られるのには意味がある。このドイツの「ユーゲント・シュティール(アール・ヌーボー)」の実相をほぐしていく過程で、種村はたえず、それを日本の大正期の芸術の実相とも重ねていくスタンスをとっているからだ。フォーゲラーを日本に伝えたのは「白樺」だったこと。また、この芸術家のコロニーの運動を、武者小路実篤の「新しき村」や、有島武郎の北海道での農場開放などとのアナロジーとして捉える視点。また、次のような指摘にも胸を突かれた。 「要するに、世紀初頭の反時代的精神は表裏一体の二つの顔を持っていた。一方が田園に隠遁すれば、もう一方は地下の舞台でこれ見よがしに演技をひけらかす。内向と外向の二つの顔が田園と都市を分割統治したのである。とどのつまりは、故郷を失った同じ根無草のボヘミヤンもしくはヴァガボンドの両様の生き方と言って差支えないだろう。一人のボヘミヤンが定住すればコロニーの住人となり、放浪を続ければ都市ではキャバレー詩人として現象する。とすれば、一人の人間が交互に両方の生き方の間を振子のように往復したとしても一向に不思議ではない。」として 「高原のコロニー作家堀辰雄の「美しい村」とレビュー小説「浅草紅団」の川端康成は天国と地獄の相補関係を形作る。「田園の憂鬱」と「墨東奇譚」も、立原道造のフォーゲラーに捧げた「真冬のかたみに・・」を含む「優しき歌」と高見順の「如何なる星の下に」も、照らし会う双生児の一対と言えようか」246p いやそれだけではない。この低地ドイツで繰り広げられたユーゲントシュティールの芸術家コロニー運動と、日本でのアナロジーとして、「そして、その全体が、朝鮮や台湾の植民地と、あるいは人工国家満州国と虚実の凹凸関係で対応していたと考えれば、私たちの二、三○年代の文化状況が何故ヨーロッパ・ユーゲントシュティールの動向と見合っているかの大よその見当がつくはずである。」 この胸のすくような「類化性能」(折口信夫)の見立てには舌を巻く。 もちろん、ぼくが強くその絵に惹かれているパウラ・モーターゾーン=ベッカーのこと、そしてこのコロニーをおとずれた若きリルケのことも。美術批評というよりも、種村さんがもつその語りやスタイルの魅力に引き込まれた一冊だった。 こんな文学的な美術批評はもう望むべくもないのだろうか。 #
by loggia52
| 2023-04-26 01:17
| 書物
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![]() 安水さんを「偲ぶ」というよりも、安水さんの詩が投げかけている詩や言葉について、ぼくらがどう考え、詩や言葉の現在と未来を考えるのか――というのが、この会の趣旨。 安水さんより三つ下のお生まれの倉橋健一さん。この3年の時間差は大きいと。『鳥』までの初期詩集には、安水さんの体験された敗戦後のニヒリズムが色濃く影を落としているという指摘。例えば詩集『鳥』の「あれが鳥だ。/大空に縛られた存在。/動くことを強いられた/被術者。/世界の外から/悪意の手によって投げこまれた/礫だ。」という鳥の形象に、それはよく表現されているという指摘。 ![]() 季村敏夫さんは、晩年の安水さんの講演の語りのスタイルをそのまま文章に写した詩論や評論の文体に危惧を覚えるという指摘。 また、安水さんの『地名抄』に触発されて、国土地理院の地図に詩を重ねた作品を制作なさった美術家の古巻和芳さんや、長年取材してこられた神戸新聞社の平松正子さん、そして、安水さんのほぼ全ての著作を上梓なさった版元の編集工房ノアの涸沢純平さんのお話など、貴重な発言が続いた。 主宰詩誌の『火曜日』の同人による詩の朗読も忘れがたいものだった。ほかに、60年代に意欲をそそいだラジオドラマの再現などもあり、たっぷりと安水さんの言葉に浸り、言葉や詩のこれからに思いを巡らすひとときになった。 ![]() #
by loggia52
| 2023-04-17 01:53
| 詩
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![]() ![]() 《戸次祥子展――影凜所(えいりんしょ)》3月25日(土)から4月11日(火)。ギャラリーサンセリテ。https://honokuni.com/area/toyohashi/15714/ 作品に接してからずっと、注目している二人の個展。 ぼくが魅かれるのは、作品に言葉(文学と言ってもいい)と結びつきがつよいところ。ナラティブなものを喚起する作品。柄澤齊も望月通陽もそういう作家だが、この二人も強い文学性、物語性に彩られている。そういう要素は、どちらかというと、美術の世界では余り評価されない。作品が言葉に頼りすぎるぶんだけ、美術としては弱いというのだろうか。 しかし、版画や人形は、言葉や物語と切っても切れない紐帯で結びついていることを思えばそうした批評はあたらない。 そういう理屈抜きにしても、二人の作品は魅力に溢れている。新鮮で潤いのある言葉や物語がおのずと胚胎している。 宮崎郁子のシーレの人形世界、今回はヴァリー・ノイツイルに焦点をあてた展示だという。彼女の言葉を聞こう。 「私は、四半世紀以上シーレ作品の人形としての立体化に取り組み続けていますが、シーレの最重要人物にもかかわらず、私の中のキャラクターとしては未だに確立できていないヴァリーでもあるのです。とても難しい・・私の作ったヴァリーさんは修正、補修を繰り返し、満身創痍の状態です。でも、それがヴァリーでありシーレであるのかもしれません。」 『日曜美術館』のシーレ特集でのお話を思い出してもいい。魅惑的な会場。2017年の個展のおりは、ぼくもかけつけた。ここのプライベート感あふれる美術館で、自分だけの宮崎シーレと時間を過ごす至福の時間に今回もひたりたいものだ。 戸次祥子のほうは、「影凜所」というタイトルそのものが醸すナラティブな世界の圏域を額縁として、想像力をそそられる作品群のようだ。作家の言葉に耳を傾けよう。 「それは、あるとき林道のカーブに立っていて、あるときは、笹原や樹間を一瞬よぎったり、そこの岩場や向こうの斜面から、じっとこっちを見ていたりしました。 時にはごく平凡に人の姿をして、登山道で話しかけて来るのもいます。 晩秋から春のはじめ頃よく出会いました。やがて新緑が萌え、夏の明るい日差しがやってくると、とんと見なくなるのです。 山に誰もいなくなる夜にはきっと、月明かりの下で、それぞれのしごとに、勤しんでいるのだと思います。 里山で見かけた、どこか透明なものたちを彫りました。本当はみんな、このまま隠しておきたいほど好きです。」 #
by loggia52
| 2023-03-29 00:40
| 美術
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![]() B6版 102頁。充実の創刊号。 峯澤さんの作品のほかに、糸井茂莉、高塚謙太郎、十田撓子、それにぼくも寄稿させてもらった。 ![]() なによりも、ほかの書き手たちの作品にたじろいでいる。しばらくは持ち歩いて読み耽ることになりそう。 《七月堂》や《葉ね文庫》で、3月4日から販売とのこと。《葉ね文庫》は夕方ごろから。 《BOOTH》でも3月5日ごろから販売とある。 デザインも秀逸。見返しや遊び紙も。そして栞つき。何よりも102頁という分量に驚く。
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by loggia52
| 2023-03-02 21:12
| 詩
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